ITJ(Interference Technology日本版)10月号_no89
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STANDARDS11  INTERFERENCE TECHNOLOGY 日本版 2021.10 トアップすることに消極的だからではないだろうか。また特定の企業や業界団体が自らの商業的利益のため、あるいは競合他社に悪影響を与える目的でロビー活動を行っているという理由で、この除外が存在する場合もある。 除外に関する問題は、一部のメーカーがシステムを悪用する可能性があることで、例えば顧客の負荷が1 kW未満であるにもかかわらず、プロ用の製品を1 kW強と評価する場合がある。これが、なぜ問題なのか?最近の製品では殆ど全て、電子式の電源変換器が使用されているが、これらは抑制されていない限り大量の高調波を電源に流出させる。一部のオフィスビルでは、3相電源の高調波負荷の大部分は個々の電力消費が75 W未満であり、規格どおり高調波電流流出の抑制対策をしていないプラグイン充電器から発生している。 上記のような除外は、ビル内またはサイト内の低電圧電源の配電が無頓着で制御されていない高調波流出により実際に被害を受け、それを使用する人全てに経済的リスクや、さらには火災安全上のリスクをもたらすという「コモンズの悲劇※」につながる可能性がある。 全ての機器の高調波流出が限度値内であっても、流出が増加して道路トンネルの照明計画がフルパワーで稼働できず、工事下請け業者に対して多額の請求をされたという例が2回ある。 高調波に起因する可能性がある問題については、筆者の簡単なガイドブック(注1)で詳しく説明している。また、電力品質全ての問題の一部として注2にも掲載している(両方ともPDFにダウンロード可能)。注1「電源高調波ガイドブック」(Mains Harmonics Guide)https://www.emcstandards.co.uk/mains-harmonics-guide注2「電力品質問題ガイドブック」(Mains Power Quality Guide)」https://www.emcstandards.co.uk/mains-power-quality-guide 高調波電流の増大が特に問題となるのは、エレクトロニクス業界が今や数年で新製品を全世界に飽和させることができるようになったものの、IEC規格は後追いになるので、現実問題に対応するには少なくとも5年かかり、EUの官報の旧版を最終的に置き換えるには、さらに18ヵ月~2年はかかるからである。 従来の非エレクトロニクス製品の設計者や製造業者の多くは、電源高調波に関する非常に現実的な問題に気づいていない。例えばポンプやファン、コンベヤーベルトなどを駆動する電気モーターをベースにした製品のメーカーでは、消費電力と全体的な総所有コストを削減しながら、製品の機能を向上させるため、可変速モータードライブを使用することが増えている。 英国では、産業・商業施設はNOC(Network Operating Company)から電力を購入しており、この法的契約の一部としてMVまたはHV電力網に流入する高調波流出の制限を受け入れることになっている。これらの制限はG5/4-1と呼ばれ、下記ウェブで読むことができる。◆MANAGING HARMONICS: A guide to ENA Engineering Recommendation G5/4-1(PDF):http://envirostart.com/documents/G54-1.pdf 過去30年間で可変速モータードライブなどの電子負荷を使うことが大幅に増えたため、多くの現場では現在、高調波が原因でNOCによって経済的に罰せられたり、シャットダウンされたりするというぎりぎりの状態になっている。 また、多くの施設では従来の配線システムが使用されているので、新しいモータードライブや他の電子負荷全てから発生する高調波電流の総和が原因で、想定以上の高温や、故障のリスクがある。 小さな機器を1つ追加するだけで発電所が停止し、問題の解決に数週間かかって1日あたり25万ポンド(約3750万円)以上の損失を被るという状況に対応した経験がある。 また、開放状態の電源ヒューズという問題に直面した電気エンジニアが、電流計に示された電流がヒューズの定格よりも小さいことに気づいて、ヒューズは開放にならないはずだと考えるのは珍しいことではない。どうしてこうなっているかわからず、大きめのヒューズを取り付けてしまい、配線やHV電源変圧器が燃えることがある。運が良ければ、建物も燃えることはないのだが! こういうことは、普通ほとんどの電気エンジニアが「真のRMS値」ではない低コストのメーターを装備し、高調波を正しく測定していないことに起因する。RMS電流を実際よりも最大30%低く測定している可能性があるのだ!(ヒューズはもちろん正しくRMS電流100%を検知する。) システム統合あるいは構築を担当する人はみな、単に(そして間違って!)機器にCEマークが付いていてEMC指令(2014/30/EU)へのEU適合宣言書があれば、高調波流出は許容されるはずだと考えるよりは、機器サプライヤとの購入契約の一部として高調波流出仕様に適合させることを常に推奨している。(EMC指令の要求事項を取り入れた無線機器指令(2014/53 / EU)へのEU適合宣言についても同様である。) 専門家として私の意見を言わせてもらうなら、高調波電流の流出を制限せずに製品を供給するのは、関連する高調波規格に完全に適合しているとしても非常に危険だということである。このような状況では、少なくともユーザーマニュアルや販売契約書の文言につ図1.高調波電流歪み率(THDi:total harmonic distortion)[※訳者注] コモンズの悲劇(Tragedy of the commons)は経済用語で、ここでは比喩的に「高調波の流出」に制限がない機器を使いすぎることによって結局電源の品質が落ち、最終的に電源が停止しかねないことを意味している。

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